あの頃に戻れるだろうか。
戻れるならやり直したい。どうしてこんな目に遭わなければならなかったのか.....。
思えば大学1年の春、彼らに出会ってからすべてが狂いはじめた。僕はあの4人を絶対に許さない。
悔恨の念に駆られている僕の目の前には、親友の死体が静かに眠っている。
大学に入ったばかりで、どこのサークルに入ろうか悩んでいた僕は親友の渡邊に誘われ「星屑ランプ愛好会」に入ることにした。渡邊と僕は小学校から大学までずっと同じ学校に通っている。渡邊は昔から星が大好きで、いつも天体図鑑を読んでいた。授業中にまで読むもんだから、教師に没収されることも1度や2度じゃなかった。流星群が見られるときには高台のある公園まで行って、渡邊が星の観察をするのに何度か付き合わされたことがある。
「武田、一生のお願い!一緒に星屑ランプ愛好会入ろうぜ!な、お願い!」
「お前の一生のお願いとかもう聞き飽きたわ、何回目だと思ってんだ」
「いいだろ〜、1人じゃ心細いんだよ!」
「はぁ、しょうがないなぁ。まぁサークル選びにも悩んでたし丁度いいか」
「へへっさすが!武田はそう言ってくれると思ったよ、サンキュ!」
正直あまり乗り気ではなかったが、キラキラと目を輝かせて頼み込んでくる渡邊を見ると断りきれなかった。これは彼の才能かもしれない。
星屑ランプ愛好会の部室は、大学の中で1番古い建物の8階にあり、階段をのぼるのだけでも一苦労だった。重たいドアを開けた渡邊に続いて部室に入ると、1人の男がずっと待ち構えていたかのように部屋のど真ん中に立っていた。その男は大きく息を吸って、部屋中に響き渡るくらいの大きな声を出した。
「ようこそ星屑ランプ愛好会へ!!!!」
あまりに大きな声だったので、僕も渡邊も圧倒されて言葉が出なかった。すると、"研究室"と書かれたドアの奥から女性が飛び出してきた。
「ちょっとやめてよ、そんなバカでかい声出すの!!ごめんね、びっくりさせちゃって。1年生かな?私は3年の西山です!よろしくね。こっちの男は勝川っていうの。こんなんだけど、一応こいつが代表やってるんだ。仲良くしてやってね!」
軽く挨拶を済ませたあとに自己紹介をした。勝川先輩はさっきの大声が嘘かと思うくらいボソボソとした小さな声で、何を言っているのかほとんど聞き取ることができなかった。西山先輩がサークルの活動日や時間について説明してくれているとき、ふと渡邊のほうに目をやると、何か言いたげな顔をしていることに気づいた。アイコンタクトで伝えようとしているが、何が何だかさっぱりわからない。
「...........い!おい!武田、聞いてんのか?」
「あ、す、すみません!」
「お前たち、幼馴染みなんだろ?それじゃあ...」
勝川先輩が話しているのを遮って部室の重たいドアがガチャッと開いた。
「ごめんなさーーい!これって遅刻ですか?遅刻ですよね?きゃーーー初っ端からやらかしたーー!!」
なんだか騒がしい女子が2人、虫が暴れているかのようにバタバタしている。
「大丈夫だよ、ダラダラ喋ってただけだから。私は3年の西山。よろしく!お名前教えてくれる?」
「ほんとうにごめんなさい!1年の三橋と...」
「同じく1年の須田ですっ!よろしくお願いします!」
勝川先輩と西山先輩は3年間2人でサークル活動をしていたらしく、1年生が4人も来たことに驚いた様子だったがとても喜んでくれていた。
星屑ランプ愛好会に入って2ヶ月が経とうとしているが、いつも楽しくおしゃべりをするだけで星やランプについての話が出てくる気配がまったくない。いつからか、なんとなく星についての話題に触れてはいけないような空気ができていた。しかし、渡邊がその空気を打ち砕こうとしていた。
「あの〜.....」
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